星評価は売上をどれだけ動かすのか|ハーバード・ノースウェスタンの実証研究を読む

星評価が1つ上がると売上は5〜9%増える——ハーバード・ビジネス・スクールの研究をはじめ、海外大学が因果関係を測った3本の論文を原典から読み解きます。数字の出どころ、調査方法、そして日本の小さなお店が何を参考にできるかまで。

こえポスト編集部

お客様の声・口コミ活用の専門家チーム

この記事でわかること

「口コミが増えると売上が上がる」——よく聞く話です。

ただ、この言い方には落とし穴があります。売れている店だから口コミが集まるのかもしれないからです。だとすれば、口コミを増やしても売上は増えません。順番が逆だからです。

この「どちらが原因でどちらが結果か」を切り分けるのは、想像以上に難しい仕事です。だからこそ海外の大学では、経済学の手法を使ってこの問題に正面から取り組んだ研究がいくつも発表されています。

この記事では、星評価と売上の関係を実際に測った研究3本を、原典にあたって読み解きます。数字だけでなく「どうやって調べたのか」まで紹介するので、自分のお店に当てはまる話かどうかをご自身で判断できるはずです。

なぜ「相関」ではなく「因果」が問題になるのか

まず、この分野の研究がなぜ難しいのかを押さえておきます。

星評価の高い店と売上の高い店を並べると、きれいな相関が出ます。しかしそれだけでは、次の3つの可能性を区別できません。

| 可能性 | 中身 | |--------|------| | 口コミ → 売上 | 評価が上がったから客が増えた | | 売上 → 口コミ | 繁盛しているから良い評価が集まった | | 第三の要因 | 料理が美味しい店は、評価も売上も両方高いだけ |

3番目がやっかいです。「料理の質」のような目に見えない要因が、評価と売上の両方を押し上げているなら、評価だけを操作しても売上は動きません。

以下で紹介する研究は、この切り分けのためにそれぞれ違う工夫をしています。その工夫こそが論文の価値なので、結果の数字とセットで見ていきます。

研究1:星1つで売上5〜9%(ハーバード・ビジネス・スクール)

誰が、何を調べたか

ハーバード・ビジネス・スクールの Michael Luca による研究「Reviews, Reputation, and Revenue: The Case of Yelp.com」(HBS Working Paper 12-016)です。

使ったデータが独特です。Yelp のレビューデータと、ワシントン州歳入局が保有するレストランの売上記録を突き合わせました。自己申告のアンケートではなく、税務当局に提出された実際の売上高です。

どうやって因果を切り分けたか

ここがこの研究の肝です。

Yelp は星評価を表示するとき、平均点を四捨五入して半星刻みで見せます。たとえば平均3.24なら「★3.0」、平均3.26なら「★3.5」と表示されます。

実際の品質は0.02しか違わないのに、表示される星の数だけが変わる。このわずかな境界線の前後を比べれば、「品質」の影響を取り除いて「表示された星」だけの効果を取り出せます。回帰不連続デザインと呼ばれる手法です。

結果

  • 星評価が1つ上がると、売上が5〜9%増加
  • この効果が出るのは独立系レストランだけ。チェーン店では効果が見られなかった
  • Yelp の普及が進むにつれ、チェーン店の市場シェアは低下した
  • 消費者は利用可能な情報をすべて使っているわけではなく、目に見えやすい変化に強く反応する

小さなお店にとっての意味

チェーン店で効果が出なかったという結果は、裏を返すと重要な示唆です。

チェーン店にはブランドという既存の信頼があります。マクドナルドの星評価が3.2でも、客は「まあマクドナルドだから」と中身を予想できる。だから口コミを読む必要がない。

一方、名前を知らない個人店では、口コミが唯一の判断材料になります。だからこそ星の数がそのまま来店の判断を左右する。

つまり、この研究が示した5〜9%という数字は、無名の小さなお店ほど当てはまりやすいということです。

研究2:星1の影響は星5より大きい(Journal of Marketing Research)

誰が、何を調べたか

Judith A. Chevalier と Dina Mayzlin による「The Effect of Word of Mouth on Sales: Online Book Reviews」。Journal of Marketing Research 誌に2006年8月に掲載された、この分野の古典です。

対象は書籍。Amazon.com と BarnesandNoble.com という2つのサイトの、同じ本のレビューと売上ランキングを比較しました。

どうやって因果を切り分けたか

同じ本が2つのサイトで売られている点を利用します。

本そのものの質は、どちらのサイトでも同じです。しかしレビューの内容や点数はサイトごとに違う。だから「同じ本の、サイト間での売上の差」と「サイト間でのレビューの差」を突き合わせれば、本の質という共通要因を打ち消せます。

結果

  • あるサイトでレビューが改善すると、そのサイトでの相対的な売上が増加した
  • 星1つのレビューが与える影響は、星5つのレビューが与える影響より大きい
  • レビューの長さに関するデータから、消費者は要約された点数だけでなく本文を読んでいることが示唆された

小さなお店にとっての意味

2つめと3つめの発見が実務的です。

まず、低評価の1件は高評価の1件では埋め合わせられません。星1が1件ついたとき、星5を1件足しても元には戻らない。感覚的にも納得できる話ですが、データでも確認されています。

そして、客は本文を読んでいます。平均点だけを気にして本文の中身を軽視するのは、この研究に照らすと的外れです。「星5、最高でした」という一言レビューを100件集めるより、具体的に書かれたレビューを20件集めるほうが効く可能性があります。

具体的な声を引き出す質問の作り方は、アンケート設計のコツで扱っています。

研究3:レビュー5件で購入率2.7倍、ただし満点は逆効果(ノースウェスタン大学)

誰が、何を調べたか

ノースウェスタン大学メディル・スクールの Spiegel Research Center が2017年に公開したレポート「How Online Reviews Influence Sales」です。

なお、これは査読付き論文ではなく研究センターのレポートです。上の2本とは性質が違うので、そのつもりで読んでください。とはいえ大学の研究機関が実際の EC データを分析したもので、この分野で最もよく引用される数字の出どころになっています。

結果

| 発見 | 数字 | |------|------| | レビュー5件の商品の購入確率 | レビューなしと比べて270%高い | | 低価格帯の商品でレビューを表示 | コンバージョン+190% | | 高価格帯の商品でレビューを表示 | コンバージョン+380% | | 購入者バッジ(Verified Buyer)の表示 | 購入確率+15% | | 購入確率が最も高くなる評価帯 | ★4.0〜4.7。5.0に近づくと下がる |

さらに、購入が確認された投稿者は星4〜5をつけやすく、匿名の投稿者は星1〜2をつけやすいという傾向も報告されています。

「★5.0が最強ではない」をどう読むか

購入確率が★4.0〜4.7でピークを迎え、5.0に近づくと下がる——この発見はよく「満点は嘘くさいと思われるから」と説明されます。

ただ、この説明は研究が直接検証したものではなく、解釈のひとつです。レポートが示しているのは「そういう分布になっている」という事実までです。

とはいえ実務的な結論は変わりません。満点を目指して低評価を消しにいく必要はない、ということです。むしろ低評価を隠す行為は、日本では景品表示法上のリスクにもなります(ステマ規制と口コミの正しい集め方)。

適正なネガティブ比率についてはネガティブ口コミの割合データも参考にしてください。

声を集める仕組みを5分で作る

依頼文の作成からフォーム設置、サイトへの自動掲載まで。こえポストなら声を集めるワークフロー全体を自動化できます。

無料で始める

3本を並べて見えてくること

| | 研究1(HBS) | 研究2(JMR) | 研究3(Spiegel) | |---|---|---|---| | 対象 | 飲食店 | 書籍 | EC商品 | | 測ったもの | 実際の売上高 | 売上ランキング | 購入確率 | | 主な発見 | 星1つ=売上5〜9% | 低評価の影響が大きい | 件数と評価帯が効く | | 効きやすい相手 | 無名の独立店 | — | 高額商品 |

領域も手法もバラバラですが、共通して言えることが3つあります。

  1. 星評価は売上を動かしている。相関ではなく因果として確認されている
  2. 既存の信頼が弱い売り手ほど、口コミの効果が大きい(無名の独立店、高額商品)
  3. 満点や大量の高評価を目指すことが最適解ではない

日本の小さなお店が、ここから何をすべきか

研究結果を実務に落とすと、優先順位はこうなります。

1. まず「ゼロを脱する」

購入確率が最も大きく動くのは、レビュー0件から5件の区間です。ここを超えるまでは、質より件数を優先していい。

10件を集めるまでの手順は口コミゼロから100件までのロードマップにまとめています。

2. 高額・高関与の商材ほど力を入れる

高価格帯でコンバージョンが380%動いたという結果は、単価の高い業種ほど口コミ投資の回収が早いことを示します。リフォーム、士業、クリニック、コンサルティングなどが該当します。

3. 「誰が書いたか」を見せる

購入者バッジで購入確率が15%上がったという結果は、投稿者の実在性を示すこと自体に価値があることを意味します。

日本の小規模事業者が同じ効果を狙うなら、氏名のイニシャル、年代、利用したサービス名、利用時期といった属性を添えるのが現実的です。顔写真まで出せればさらに強いですが、肖像権の扱いには注意が必要です。

4. 本文を集める設計にする

星だけのレビューは、研究2が示した「客は本文を読む」という事実に応えられません。

「満足しましたか」ではなく「どんなことで困っていて、どう変わりましたか」と聞く。質問の立て方ひとつで、集まる本文の密度は変わります。

この研究をそのまま信じてはいけない部分

正直に書いておきます。

データはすべて米国のものです。 日本の消費者が同じように反応するとは限りません。日本は星評価の平均が海外より低く出る傾向が指摘されることもあり、「★4.0〜4.7が最適」という帯がそのまま当てはまる保証はありません。

時期も古いものがあります。 研究1と2は2006〜2016年のデータです。スマートフォンの普及も、AI による要約表示も、当時とは状況が違います。

業種が限られています。 飲食店、書籍、EC商品。美容室や整体院や士業のデータではありません。

それでも紹介する価値があるのは、方向性と桁感は参考になるからです。「星1つで売上が5〜9%」を「うちなら正確に7.2%」と読むのは間違いですが、「星評価は売上に無視できない影響がある」と読むのは妥当です。

こえポストで研究どおりの運用をする

こえポストは、上の3点を実務に落とすための道具として使えます。

  • 専用フォームのURLを送るだけで声が集まるので、ゼロから最初の5件を超えやすい
  • 質問テンプレートが業種別に用意されているので、星だけでなく本文が集まる
  • お名前・肩書き・利用時期を添えて掲載でき、投稿者の実在性を示せる
  • 集まった声は承認したものだけをサイトに表示できる

無料プランでも累計10件まで集められます。まず「ゼロを脱する」ところから試してみてください。

まとめ

  • ハーバード・ビジネス・スクールの研究では、星評価が1つ上がると売上が5〜9%増加した。効果が出たのは独立系レストランのみ
  • Journal of Marketing Research の研究では、星1の影響が星5の影響より大きく、消費者は本文を読んでいることが示された
  • ノースウェスタン大学のレポートでは、レビュー5件で購入確率が270%、購入確率のピークは★4.0〜4.7だった
  • 共通するのは「既存の信頼が弱い売り手ほど口コミが効く」という点
  • ただしすべて米国のデータであり、業種も時期も限られている。方向性と桁感の参考にとどめるのが適切

出典

  • Michael Luca (2016). Reviews, Reputation, and Revenue: The Case of Yelp.com. Harvard Business School Working Paper 12-016. HBS / SSRN
  • Judith A. Chevalier and Dina Mayzlin (2006). The Effect of Word of Mouth on Sales: Online Book Reviews. Journal of Marketing Research, 43(3). DOI: 10.1509/jmkr.43.3.345. NBER Working Paper 10148 / SAGE
  • Spiegel Research Center, Medill School, Northwestern University (2017). How Online Reviews Influence Sales. レポートページ

関連記事:

シェアXLINEはてブ

この記事を書いた人

こえポスト編集部

お客様の声・口コミマーケティングの専門チーム。サロン・クリニック・士業など、スモールビジネスが「お客様の声」を集めて売上につなげるための実践ノウハウを発信しています。

無料で始められます

集めた声を、そのままサイトに飾れます

クレジットカード不要。5分でフォームを作成し、コピペでサイトに埋め込めます。

こえポストを無料で試す

お客様の声の集め方Tips

お客様の声の効果的な集め方・活用方法を週1回お届け。 業種別の成功事例や、すぐ使えるテンプレートも配信します。

いつでも配信停止できます。スパムは送りません。

あわせて読みたい

記事一覧