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口コミへの返信は本当に評価を上げるのか|海外の実証研究が出した答え

口コミに返信すると平均評価が0.12上がり、投稿数が12%増える——TripAdvisorとExpediaの差を使ったマーケティング・サイエンス誌の研究と、15万件の返信を分析した最新研究から、返信の効果と副作用を読み解きます。

こえポスト編集部

お客様の声・口コミ活用の専門家チーム

この記事でわかること

口コミへの返信は、多くの事業者にとって「やったほうがいいらしいが、正直しんどい」作業です。

1件返すのに5分かかるとして、月30件なら2時間半。その時間に見合うリターンがあるのか——この問いに、海外の研究者たちは実際のデータで答えを出しています。

この記事では、返信の効果を定量的に測った研究2本を紹介します。結論から書くと、返信には効果があります。ただし「良いことしか起きない」わけではないという、あまり紹介されない副作用も一緒に報告されています。

返信の効果を測るのが難しい理由

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まず、この研究がなぜ難しいのかを押さえます。

「返信している店は評価が高い」というデータを取っても、それだけでは何も言えません。丁寧な店だから返信もするし、サービスも良い——という可能性が消えないからです。

さらにやっかいなのは、評価が下がった店ほど慌てて返信を始めるという傾向です。この場合、素朴にデータを見ると「返信を始めた店は評価が低い」という逆の相関すら出かねません。

ここを切り分けた研究が、次に紹介するものです。

研究1:TripAdvisorとExpediaの差を使った自然実験

誰が、何を調べたか

Davide Proserpio(南カリフォルニア大学マーシャル経営大学院)と Georgios Zervas(ボストン大学クエストロム経営大学院)による「Online Reputation Management: Estimating the Impact of Management Responses on Consumer Reviews」。Marketing Science 誌 2017年、36巻5号に掲載されました。

どうやって因果を切り分けたか

この研究の巧みなところは、2つの予約サイトの「慣習の違い」を利用した点です。

ホテル業界には、次のような実態がありました。

| | TripAdvisor | Expedia | |---|---|---| | ホテルの返信 | 日常的に行う | ほとんど行わない |

同じホテルが、両方のサイトにレビューを持っています。ホテルの実際のサービス品質は、どちらのサイトでも同じはずです。

だとすれば、あるホテルが返信を始めたあと、TripAdvisor 側だけで評価が動いたなら、それは返信の効果と考えられます。Expedia 側は「返信していない場合」の比較対象として機能します。

結果

  • 返信を始めたホテルは、平均評価が0.12上昇した
  • レビュー投稿数が12%増加した
  • ホテルは評価が下がったあとに返信を始める傾向があり、ポジティブ・ネガティブ・中立のレビューにほぼ同じ割合で返信していた

見落とされがちな副作用

この論文で最も興味深いのは、次の発見です。

返信を始めたホテルは、ネガティブなレビューの件数は減ったが、1件あたりが長くなった。

論文はこう解釈しています。ホテルが返信して内容を精査してくるとわかると、不満を持った客は「短くて反論しようのないレビュー」を書きにくくなる。「最悪でした」の一言では済まなくなり、書くなら具体的に書くことになる。だから件数は減り、長さは増える。

つまり返信は、低評価そのものを減らすのではなく、低評価の「質」を変える側面があるということです。

これは実務的には両刃の剣です。具体的なクレームは改善のヒントになりますが、読み手にとっては説得力のある低評価が残ることになります。

研究2:15万件の返信から見た「どちらに返すべきか」

誰が、何を調べたか

Jiajun Wu、Jun Ye、Junhong Chu による「Soothing the unsatisfied or pleasing the satisfied?(不満な人をなだめるか、満足した人を喜ばせるか)」。Journal of the Academy of Marketing Science 誌に掲載された研究です。

15万件を超えるオンラインレビューと、それに対する事業者の返信を分析しています。

結果

研究が問うたのは、「限られた時間を、高評価と低評価のどちらへの返信に使うべきか」というきわめて実務的な問いです。

  • ポジティブなレビューへの返信は、その後の評価に対してより即時的でわかりやすい効果があった
  • ネガティブなレビューへの返信の効果はより複雑で、短期的には評価がむしろ下がる場合がある。追加の不満が表面化するため。長期的には信頼構築を通じて評価の改善につながる
  • 競合も返信するようになると、返信の優位性は薄れる

なお、この研究について公開されている解説では具体的な効果量(何%、何ポイント)までは示されていません。方向性の話として受け取るのが適切です。

「高評価にも返す」が軽視されている

実務の現場では、返信といえばまずクレーム対応が思い浮かびます。低評価には慌てて返し、高評価は放置する——という運用は珍しくありません。

しかしこの研究は、その優先順位が最適とは限らないことを示しています。

考えてみれば筋は通ります。高評価を書いてくれた人はすでに好意的です。そこに返信が返ってくれば、関係はさらに強まり、再来店や次のレビューにつながる。一方、低評価を書いた人の心を返信ひとつで変えるのは、そもそも難しい仕事です。

低評価への返信は、書いた本人ではなく、それを読む未来のお客さんに向けたものだと考えると整理しやすくなります。

2本を合わせて読むと

| | 研究1(Marketing Science) | 研究2(JAMS) | |---|---|---| | 対象 | ホテル | 幅広い事業者 | | データ | TripAdvisor / Expedia | 15万件超のレビューと返信 | | 主な発見 | 評価+0.12、投稿数+12% | 高評価への返信のほうが効果が早い | | 副作用の指摘 | ネガティブが長文化 | 低評価への返信は短期的に評価が下がりうる |

共通しているのは、「返信すれば単純に評価が上がる」という単純な話ではないという点です。両方の研究が、返信の副作用や条件つきの効果を報告しています。

同時に、両方とも返信そのものは有効だと結論している点も一致しています。

日本の小さなお店が、ここから何をすべきか

1. 全部に返すなら、まず高評価から

時間が限られているなら、研究2の示唆に従って高評価への返信を先に片づけるのが合理的です。しかも高評価への返信は、低評価への返信より短時間で書けます。

「ありがとうございます」の一言では味気ないので、本文の中身に一箇所だけ触れるとぐっと良くなります。「カウンター席でゆっくりできたとのこと、うれしいです」のように。

2. 低評価への返信は「読者向け」と割り切る

書いた本人の評価を覆すのは難しい。返信の目的は、その口コミを読む次のお客さんに「この店はちゃんと向き合う」と伝えることです。

そう考えると、書くべき内容も変わります。言い訳や反論ではなく、事実確認・謝意・改善の3点を淡々と。具体的な文例はネガティブ口コミへの返信例文15選にまとめています。

3. 「返信すると低評価が長文化する」を織り込む

研究1が示した副作用は、日本でも起こりうる話です。

これを悲観的に捉える必要はありません。長文の低評価は、短い低評価より改善のヒントが多いからです。「二度と行かない」からは何も学べませんが、「予約時間の15分後に案内された」からは学べます。

4. 返信は投稿数も増やす

研究1は、返信によってレビュー投稿数が12%増えたと報告しています。返信は既存の口コミへの対応であると同時に、新しい口コミを呼ぶ施策でもあるということです。

返信が表示されている口コミ欄は、「ここに書けば読んでもらえる」というシグナルになります。

この研究をそのまま信じてはいけない部分

対象が海外のホテル業界に偏っています。 研究1はホテルのデータです。宿泊のように単価が高く、事前の情報収集が念入りな業種と、近所の美容室では事情が違います。

プラットフォームの仕様も違います。 Googleビジネスプロフィールの口コミと TripAdvisor では、返信の表示のされ方も、読まれ方も同じではありません。

時期が古めです。 研究1は2017年の発表で、データはそれ以前のものです。

それでも、「返信には効果があるが副作用もある」という構造は、業種やプラットフォームを超えて参考になります。

こえポストで返信の負担を減らす

こえポストで集めたお客様の声は、Googleの口コミとは違い自社サイトに掲載する用途が中心なので、そもそも公開返信の必要がありません。

そのうえで、返信を運用に組み込みたい場合は次のように使えます。

  • 集まった声をダッシュボードで一覧管理し、対応済みかどうかを把握できる
  • 承認制なので、内容を確認してから掲載できる
  • 低評価をいただいた方には、公開返信ではなく個別にメールでお礼と報告を送れる(ビジネスプラン)

Googleの口コミへの返信を効率化したい場合は、口コミの一括返信の手順も参考にしてください。

まとめ

  • Marketing Science 誌の研究では、返信を始めたホテルは平均評価+0.12、投稿数+12%という結果が出た
  • 同じ研究が、ネガティブなレビューは件数が減る代わりに長文化するという副作用も報告している
  • 15万件を分析した研究では、高評価への返信のほうが効果が早く現れることが示された。低評価への返信は短期的には評価を下げうる
  • 実務では、高評価への返信を先に片づけ、低評価への返信は「読者向け」と割り切るのが合理的
  • ただしデータは海外のホテル業界に偏っており、数字をそのまま自社に当てはめるのは避けたほうがよい

出典

  • Davide Proserpio and Georgios Zervas (2017). Online Reputation Management: Estimating the Impact of Management Responses on Consumer Reviews. Marketing Science, 36(5), 645–665. DOI: 10.1287/mksc.2017.1043. INFORMS / SSRN / 著者版PDF(全文)
  • Jiajun Wu, Jun Ye and Junhong Chu. Soothing the unsatisfied or pleasing the satisfied? The effects of managerial responses to positive versus negative reviews on customer ratings and financial performance. Journal of the Academy of Marketing Science. DOI: 10.1007/s11747-024-01010-3. Springer / Academy of Marketing Science による解説

※ 学術誌のリンクは、出版社のサイトで本文が有料の場合があります。要旨は無料で読めます。


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この記事を書いた人

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お客様の声・口コミマーケティングの専門チーム。サロン・クリニック・士業など、スモールビジネスが「お客様の声」を集めて売上につなげるための実践ノウハウを発信しています。

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